痛くて痛くてたまらない真実にどっぷり浸かる。
最後の最期まであがく覚悟。
そんな「生き抜く」という貫く美学。
「ルバーブのタルト」




「ルバーブのタルト」

ルバーブとは、シベリア原産のタデ科の野菜で、

和名では、「食用大黄」(ショクヨウダイオウ)と言います。

私は、食の世界に入ってから初めて食べましたが、いつだったか覚えていない。

たしか、コンフィチュール(ジャム)だったような違うような・・・

名前を知り、食べたことがないので、何ものなのか調べた記憶があります。

野菜ということで美味しそうとは思えなかったのですが、

ジャムや甘いお菓子に仕立てると、とても好きな味でした。

そのままでは酸味が強く、とても食べたいとは思えないので不思議なものです。

フランスに行ったとき、ルバーブとフレーズ・デ・ボワ(森いちご)のタルトを

食べたのが印象的でした。このタルトもルバーブのコンフィチュールが中に敷いてあって、

その上に直接、フレーズ・デ・ボワがのっていました。

そこからのイメージで、今回のルバーブのタルトは、ルバーブのコンフィチュールが

アーモンドクリームの下に敷いてあります。

見た目はわかりにくいですが、それなりにぬってあるんですよ。

アーモンドクリームの上にも、生のルバーブをのせて焼くため、

全量で味のバランスが良くなるように調整しています。

このタルトのアーモンドクリームは、ヘーゼルナッツパウダーを配合して

香ばしさをプラスしてあります。アーモンドクリームは、

アーモンドの種類やメッシュの選択、鮮度を保つ保管方法、

バターや卵の種類や配合、仕込みによるバター(油脂)と卵(水分)の乳化、

クリーム自体の鮮度など、基本的なクリームであるからこそ、

些細に感じることの積み重ねで美味しさが決まってきます。

上にのせるルバーブは、前日の夜に、砂糖をふりかけておいて、

浸透圧で水分を出しておきます。翌朝、手でギュッと絞ってから

アーモンドクリームの上にのせて、バニラシュガーをかけて焼いています。

タルト生地のパート・シュクレ(甘いタルト生地の総称)は、

タルトごとに配合を変えています。今回は、石臼挽きの細かい全粒粉を配合し、

ザクッとした食感と香ばしさを強くしています。

だからといって、ざらつきがあって、粉っぽくて口どけが悪いということはありません。

タルト生地もアーモンドクリームも油脂だらけですから、油脂の酸化が最大の敵。

油脂の酸化が感じられない鮮度の良いタルトに出会うのは簡単ではなく、

私が最も気を遣うところです。

華やかさはなく、地味なタルトですが、滋味を感じることは自然を感じること。

見た目や珍しさ、インパクトが先行するこの業界ですが、

私は地味なものほど大切につくりたいと思います。

ルバーブに不慣れな方も、ぜひ、お試しください。






 
スイーツ - -
「クラフティ」




季節でフルーツを変えておつくりしている「クラフティ」。

6月6日までは「グリオットチェリーのクラフティ」でした。

グリオットチェリーは、ヨーロッパで多く栽培され、

フランスやドイツのお菓子ではよく使われる素材です。

甘酸っぱく、味が濃厚なため、お菓子に使っても他の素材に負けません。

クラフティ生地に、酸の強いものを合わせて対比を楽しむ、

あるいは、桃や洋梨のような優しい味わいのもので

調和させてひとつの味にするものもあります。

生地は、全卵に卵黄をプラスして、生クリーム、牛乳、砂糖、粉でつくります。

生クリームと牛乳にバニラのさやとバニラビーンズを入れ加熱し、

香りを移します。フルーツによって、バニラの香りの必要性が異なるため、

イメージする香りの強さになるよう、香りの移し方を変えます。

ただ、沸騰させて、蓋をして1時間放置する場合もあれば、

そのまま冷ませて翌日まで冷蔵庫で寝かせて、さらに、香りを移すときもありますし、

さやを3等分に切って、数分間、煮ることで、より強くするよきもある。

一度使ったさやだけを入れて、香りを出しすぎないようにする場合もあります。

バニラは、入れることで香りが出るのではないのです。

生地づくりは、至って簡単で誰でもできる作業です。

混ぜるだけです。

しかし、100人いれば100通りの生地が出来上がります。

それは、人によって作業中に意識していることが違うからです。

製菓理論を何も知らない人が隣で真似して作業したのと、

よく理解している人が作業するのは味が違います。

徹底的に素材の特性を知り、自分を捨てて、素材に合わせた作業に徹する。

上級まではそれを目指すべきですし、それで95点くらいまではいけると思います。

その先は、別次元。

作業中に作業の注意事項について考えているようでは自分を超えられない。

そんなものは、とっくに沁みついていないといけない。

つくるときは、食べてくれる人の喜ぶ姿や笑顔をイメージする。

美味しくつくることができるイメージ以外があってなりません。

上手くいかなったらどうしようなどの不安や恐れがあれば

微かに作業に影響して味に出ます。

そして、自然発生的に湧いてくる感謝。

我々は、素材あってこそつくるということができます。

素材、つまり、それらを販売する人、加工する人、原料を栽培する人、

原料を生む動植物、すなわち、自然。

すべてに感謝。

私は、クラフティであれば、卵と乳製品がメインですから、

鶏(卵)と牛(生乳)に感謝の念を持ちます。

私は実行犯的な存在にすぎず、管理人であり、

クラフティとは、鶏と牛の合作だと思っています。







上にのせる生クリームは、時期により乳脂肪分を変えています。

今の時期くらいから夏の終わりまでは脂肪分が少な目の軽いものを使用します。

人間の身体と自然は、自然と合うようにできているのだと思います。

牛乳で言えば、夏に向かって、牛も水を多く飲みますし、

乳脂肪分が下がります。冬に近いと乳脂肪分が上がってきます。

つまり、夏はさっぱりしていて、冬はコクが強いということ。

人間も、自然と身体がそういう食べ物を欲していますよね。

例えば、カルボナーラは、夏よりも冬に食べたくなるはずです。

(夏に食べても美味しいものは美味しいとは思いますが)

私は、生クリームも同様に身体に合わせて変化すべきだと思っています。



焼くのも簡単。

ほぼ、一定の温度で(5度ほど、途中で下げます)、

フルーツの水分量により火通りが変わりますので、

それに合わせて時間を調整するだけです。

卵は80度台、小麦粉は90度台で完全に火が入ります。

170〜180℃で焼きますので、どこまで火を入れるかは、

伝えたい食感のイメージ次第で変わってきます。

冷ましたものを冷蔵庫で冷やしても、それはそれで美味しいです。

油脂分が冷えて硬くなるのと、小麦粉中のデンプンが老化して硬くなるため、

常温よりも硬くなりますが、冷たいほうが甘みは感じにくくなります。

その分、冷えると、卵の温かみのある味の丸さ、コクは薄れますが、

こちらのほうが好きな人もいるかもしれません。

そういうことも、すべて含めて「つくる」の一部。

何を伝えたくて、何をするか。

すべては、イマジネーションから始まる。







 
スイーツ - -
「タルト・シトロン」




予告なしで、5月15日からスタートしたレモンのタルト

「タルト・シトロン」

タルト生地は、パート・シュクレ(甘めのタルト生地の総称)で、

私は、何に使うかで配合や焼き方を変えています。

レモンの爽やかさ、卵、バターのコク、両者の芳醇な香りを活かすため、

タルト生地に香ばしさはいらない。素材の自然な風味とよい食感、

油脂が酸化したり、粉っぽいなど、不快な要素がない生地を

ごく普通につくればよいと考える。

クレーム・シトロンは、レモンカードのように全量を入れて鍋で加熱するのではなく、

湯せんで83℃になるまで攪拌しつづけて仕込むタイプを採用。

攪拌するということは、空気が入るということになり、

空気が入るということはクリームの温度が下がることになる。

湯せんで温めて火を入れたいのに、火が入りにくい状況をつくる。

これにより、火通りは悪くなり、少しずつ火が入る状況をつくり、

卵に極限まで細かく緩やかに火を入れる。

そうすることで、ざらつきはもちろん皆無、口当たり、口どけが最良のものとなる。

攪拌が足りなければ簡単に火が入ってしまう。

どんなに手が疲れようとも手を止めてはならぬ。

ハンドミキサーでもできなくはないが、それでは、最適な火通りの感触がわからない。

空気を抱き込んだ卵ベースのクリームが50℃くらいのとき

バターを投入して乳化させる。

一度に入れれば、バターが卵の外に出て油っぽくなってしまう。

一日中、働いた後、さらに、仕込みをした最後、

23時、24時に、ひとり作業に取りかかる。

自己との闘い。

もう握力がなくなって手を止めてしまいそうになるが、頭に、心に、よぎるのだ。

「明日は、これを楽しみにしているであろうお客様のご予約で満席だ!」

「明日は、これが大好きな○○様が来る日だ!」

「昨年よりも進化させて、喜んでもらいたい!」

そこまで攪拌しなくても、それなりには美味しいと知っている。

しかし、伝えたい味は違う。ただ、なめらかなだけではない

卵が熱凝固し始めてから空気を抱き込んだからこそ生まれる

微かに、ふわっとした軽さ。

そうでなければ、この配合では少々、重い。

酸味も甘みもコクもしっかりあるが、後味は重くなく、

一回では1個でいいけれど、明日になればもう一回食べたくなる味にしてある。

腕の筋肉がどうにかなってしまいそうなほどのギリギリの瞬間に

クリームの温度が83℃になったことを感じる感触が来る。

場所により温度はばらつくため、温度計には頼らない。

これを翌日まで寝かせて卵臭さをなくし、冷えて締まった状態で

ご注文をいただいてお出しする5分前にタルトに詰める。

これが、あの味です。






さて、盛り上がってきたところですが、

「タルト・シトロン」は、5月で終了となりました。

あえて、先に語ることもありますが、基本的には無言の美学。

モノだけでどこまで伝わるかに、すべてをかけたい。

大切なモノは目には見えないもの。

万が一、来年も私が生きていたならば、また、つくりたいと思います。

ありがとうございました。






 
スイーツ - -
「ペッシュ・ド・ヴィーニュのクラフティ」





フランス産の赤い桃、「ペッシュ・ド・ヴィーニュ」。

日本の桃でつくろうとは思わないのですが、

日本の桃よりも味わいはしっかりしているため、乳製品と合わせても大丈夫。

カスタードクリーム的なコクのあるクラフティ生地、

大きめカットのペッシュがジューシーです。

明日も焼きます。





 
スイーツ - -
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